海洋維新の傑物−頭足類にみる知と社会−

池田 譲(琉球大学・理)

頭足類はイカ、タコ、オウムガイ、そして化石種のアンモナイトから成る軟体動物の一群である。このうち、鞘形類と区分けされるイカとタコは、水産物や文化的キャラクターとして日本人には馴染み深い。一方、一見意外にもみえるが、イカとタコは知性を発達させた不思議なグループでもある。高精度のレンズ眼をもち、無脊椎動物界では最大で、脊椎動物にもひけをとらない巨大脳を備え、高度な学習や記憶などの知性行動をみせる。しかし、その寿命は短く、知性の使い道には不可解な謎が残る。この疑問に、社会という観点から光を当てると、また違ったイカ像、タコ像が現れる。本講演では、群れをなすアオリイカを題材に演者らの研究グループが進めた一連の社会認知に関する行動研究から、別名「海の霊長類」、頭足類が織り成す知と社会の世界について紹介したい。

貝類を通して生命現象に迫る 3:貝類の行動